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香菜ロール


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あんこたっぷり尾頭つき


時は70年代半ば。所は兵庫県淡路島、鳴門の渦潮にもほど近い洲本市の
料理旅館の宴会場。
少し離れた卓の若い女性がキャーキャーと叫び声を上げている。
片身を削がれた鯛が畳の上をはね回っているのだ。
「馬鹿だね、あんなに大騒ぎしなくてもいいのに」
と言った途端、我が卓の同席者がギャアーッと吠えた。
見ると、大皿に盛られていた活作りの鯛が皿から飛び出し、卓の上を跳ね回って
いる。鯛の上にきれいに並んでいた片身の刺身もバラバラと皿からこぼれている。
「おい!齋藤!鯛を早く皿に戻せ!」
私が後輩に命じた言葉である。しかしそんな私の腰もなぜか引けているのである。
「はい、今やります」
齋藤が膝立ちになって今まさに卓から落ちようとする鯛の尻尾をつかまえたのだが、
思った以上に力が強いらしい鯛はブルンブルンと大きく左右にカラダを振るといとも
簡単に齋藤の手を離れて畳に転がり落ちる。
「ギャアーッ!」
隣の卓も吠えた。
部屋中が叫び声に埋め尽された頃合いを見計らっていたのか、仲居さんが数人
歩いてきて畳の上を転がり回っている鯛をヒョイヒョイとつかみ上げる。
「塩焼きと煮付け、どちらがいいですか?」

どうもこれは毎日行なわれている「残酷活作りショー」だったのですね。
この大騒ぎで宴会を盛り上げてくださいというありがたいおもいやりかもしれない
けれど、趣味が悪いというか、ウチの鯛はこんなにも活きが良いのですよ、という
魂胆が見え透いているというか、あまり誉められた代物ではなかった。
同卓の連中は食欲を失くしてしまったのか、刺身にも煮付けにもあまり手を出さな
かった。おかげで甘辛く煮付けた鯛をほとんど私がいただいたのでありますが。
こんなこと今でもやっているのだろうか。

最初の写真は、鯛の身を薄くひいて香菜を巻きゴマをふりかけたもの。
サク二枚で1パックになってるようなのを買ってくると、そのまま刺身だけで
食べると飽きてしまうので作ってみました。
あとウチでよくやるのが鯛の身を細切りにしてこれまた細切りの胡瓜・たくあんと
合わせてスダチをギュッと搾ってゴマをふりかける。これを海苔で巻いて醤油に
つけて食べる。完全に鮭の肴ですね。ミメイの喜ぶ顔が見えるようだ。

次の写真は見ての通り。スーパーで売っていたのでお昼ごはん代わりに買って
みました。頭から尻尾までたっぷりとあんこが入っていてちょっと太りすぎの体型
だったけれどなかなか美味しかった。あんこはどうだったかって?
もちろん、粒あんでした。そう言えばこしあんの鯛焼きってあったかなあ。